- 1 スーパーの売上はいくら?山形の店舗から考える客数・客単価・利益の仕組み
- 1.1 スーパーの売上は「客数×客単価」で決まる
- 1.2 実際のスーパーは1日に何人くらい利用するのか
- 1.3 駐車場とレジから来店客数を推測する
- 1.4 「1時間100人」で試算すると月商はいくらになるか
- 1.5 仕入れ値の2倍で売っているとは限らない
- 1.6 粗利益と営業利益は別物
- 1.7 ヤマザワの決算から分かるスーパー経営の厳しさ
- 1.8 スーパーが赤字になる理由
- 1.9 ドラッグストアが食品を増やす理由
- 1.10 スーパーと商店街では強みが異なる
- 1.11 スーパーと低価格カット専門店の共通点
- 1.12 スーパーと美容室で異なるもの
- 1.13 10店舗に増やせば利益も10倍になるのか
- 1.14 店舗経営では売上より粗利益を見る
- 1.15 小規模店舗がスーパーから学べる5つのこと
- 1.16 よくある質問
- 1.17 まとめ|身近な店を数字で見ると経営の構造が見えてくる
スーパーの売上はいくら?山形の店舗から考える客数・客単価・利益の仕組み
※本記事には、公開されている業界データを参考にした数値と、店舗を観察して考えた仮説の両方が含まれています。個別店舗の実際の売上や利益を示すものではありません。
2026年7月23日のstand.fmでは、「スーパーと商店街」をテーマに話しました。
山形で暮らしていると、ヤマザワ、おーばん、ヨークベニマルなどのスーパーマーケットを日常的に利用します。
食品を多く扱うツルハドラッグ、カワチ薬品、クスリのアオキ、ウエルシアなども、生活者から見ればスーパーに近い役割を持っています。
そこで気になったのが、次の疑問です。
スーパーには1日何人が来店し、どれくらい売り上げているのか。
商品をいくらで仕入れ、いくらで販売しているのか。
大きな売上のうち、最終的にどれくらい利益が残るのか。
今回は音声配信で行った試算を整理し、実際の業界データとも照らし合わせながら、スーパーマーケットのビジネスモデルについて考えてみます。
スーパーの売上は「客数×客単価」で決まる
スーパーに限らず、店舗の売上を考える基本式は非常にシンプルです。
売上=来店客数×客単価
例えば、1日1,000人が来店し、1人あたり平均3,000円を購入した場合、1日の売上は次のようになります。
1,000人×3,000円=300万円
30日営業すると、単純計算では月商9,000万円です。
300万円×30日=9,000万円
1日1,500人、客単価2,500円なら、1日の売上は375万円です。
1,500人×2,500円=375万円
月商にすると、約1億1,250万円になります。
このように、スーパーは1人あたりの購入金額だけを見ると特別高額ではありません。
しかし、毎日1,000人以上が利用すれば、月間売上は簡単に億単位になります。
実際のスーパーは1日に何人くらい利用するのか
全国スーパーマーケット協会の資料では、売場面積1,400平方メートル程度の標準的な店舗について、2024年調査の中央値として次の数字が示されています。
| 項目 | 平日 | 土日 |
|---|---|---|
| 1日客数 | 1,675人 | 1,800人 |
| 客単価 | 2,191円 | 2,555円 |
| 1人あたり買上点数 | 10点 | 11点 |
同資料では、売場面積1,400平方メートル相当の店舗の年間売上高は、約13億円とされています。
この数字から単純計算すると、平日の1日売上は約367万円です。
1,675人×2,191円=約367万円
土日は約460万円になります。
1,800人×2,555円=約460万円
音声配信では「客単価5,000円くらいではないか」と考えていましたが、業界全体の標準的な店舗を見ると、平均客単価は2,000円台が一つの目安になります。
もちろん、次の条件によって実際の数字は大きく変わります。
- 店舗の規模
- 商圏人口
- 駐車場の台数
- 競合店の数
- 酒類や日用品の品ぞろえ
- まとめ買いの割合
- 平日と休日
- 観光地か住宅地か
- 高価格帯か低価格帯か
大型店や地域の繁盛店であれば、年間13億円を大きく超える可能性もあります。
そのため、月商1億5,000万円や2億円という仮説も、店舗規模によってはあり得ない数字ではありません。
ただし、すべての地方スーパーがその水準に達しているとは限りません。
駐車場とレジから来店客数を推測する
個別店舗の売上が公開されていなくても、現地を観察すれば、おおよその客数を推測できます。
駐車場から推測する方法
まず、10分間に入店または退店する車の台数を数えます。
仮に10分間で20台が動いた場合、1時間では約120台です。
20台×6=120台
1台あたり平均1.3人が来店すると仮定すれば、1時間あたり約156人になります。
120台×1.3人=156人
12時間営業なら、単純計算で1,872人です。
ただし、徒歩、自転車、同乗者、短時間で退店する人、長時間滞在する人がいるため、あくまで概算です。
レジから推測する方法
レジ台数からも計算できます。
例えば6台のレジが稼働し、1台あたり3分に1組を処理する場合、1時間の処理能力は120組です。
60分÷3分×6台=120組
夕方の混雑時間はレジがフル稼働していても、午前中や夜間には空いている時間があります。
そのため、最大処理能力をそのまま営業時間全体に掛けると、売上を過大評価しやすくなります。
実際に推測する場合は、次の時間帯を分けて数える方が正確です。
- 開店直後
- 昼前
- 午後
- 夕方の繁忙時間
- 閉店前
「1時間100人」で試算すると月商はいくらになるか
1時間あたり100人、営業時間12時間、客単価2,300円で計算します。
1日の客数
100人×12時間=1,200人
1日の売上
1,200人×2,300円=276万円
30日間の売上
276万円×30日=8,280万円
1時間あたり150人なら、月商は約1億2,420万円です。
| 1時間の客数 | 1日の客数 | 客単価 | 1日売上 | 月商30日 |
|---|---|---|---|---|
| 80人 | 960人 | 2,300円 | 約221万円 | 約6,624万円 |
| 100人 | 1,200人 | 2,300円 | 約276万円 | 約8,280万円 |
| 150人 | 1,800人 | 2,300円 | 約414万円 | 約1億2,420万円 |
| 200人 | 2,400人 | 2,300円 | 約552万円 | 約1億6,560万円 |
スーパーの売上を考える場合、客単価を5,000円と置くより、まず2,000円から3,000円程度で試算し、店舗の特徴に応じて調整する方が現実に近づきます。
仕入れ値の2倍で売っているとは限らない
音声配信では、次のような仮説も考えました。
100個を3,000円で仕入れて、100個を6,000円で販売しているのではないか。
これは粗利益率50%の計算になります。
しかし、一般的な食品スーパーでは、すべての商品に50%の粗利益を乗せているわけではありません。
2025年のスーパーマーケット年次統計調査における、商品カテゴリー別の「目標とする粗利益率」の平均値は次のとおりです。
| 商品カテゴリー | 目標粗利益率 |
|---|---|
| 青果 | 23.2% |
| 水産 | 28.3% |
| 畜産 | 28.2% |
| 惣菜 | 38.7% |
| 日配品 | 22.7% |
| 一般食品 | 20.3% |
| 非食品 | 21.6% |
惣菜は比較的粗利益率が高く、一般食品は低いという違いがあります。
例えば100円で販売する一般食品で、粗利益率が20%なら、売上原価は約80円です。
販売価格100円-売上原価80円=粗利益20円
100円で販売する惣菜で粗利益率が約39%なら、売上原価は約61円です。
販売価格100円-売上原価61円=粗利益39円
ただし、粗利益39円が、そのまま店の利益として残るわけではありません。
粗利益と営業利益は別物
スーパーの収益を考えるときに、特に注意したいのが「粗利益」と「最終的に残る利益」の違いです。
粗利益
売上-商品の仕入原価=粗利益
営業利益
粗利益-人件費-家賃-光熱費-物流費-その他の経費=営業利益
スーパーには、商品の仕入れ以外にも多くの費用が発生します。
- 正社員やパートの人件費
- 会社負担の社会保険料
- 店舗家賃や土地代
- 電気・水道・ガス
- 冷蔵庫・冷凍庫の電気代
- 物流センターや配送車両の費用
- レジやシステムの利用料
- キャッシュレス決済手数料
- 広告・チラシ代
- 商品の廃棄ロス
- 万引きなどによる棚卸し差異
- 店舗設備の減価償却
- 修繕費
- 本部社員や管理部門の費用
売上が大きいからといって、利益率まで高いとは限りません。
ヤマザワの決算から分かるスーパー経営の厳しさ
山形県を中心に展開するヤマザワの2026年2月期連結決算では、売上高が約1,054億円、営業利益が約11億4,200万円でした。
売上高営業利益率は約1.1%です。前年は営業損失を計上しており、売上高が1,000億円を超える企業でも、利益を確保することは簡単ではないと分かります。
単純化すると、100円売り上げたうち、営業利益として残るのは約1円です。
約11億4,200万円÷約1,054億円=約1.1%
もちろん、これは会社全体の連結決算であり、個別店舗の利益率とは異なります。
それでも、スーパーを「仕入れた商品を高く売るだけの高利益率事業」と考えるのは正確ではありません。
スーパーは、次の特徴を持つ事業だと考えられます。
売上規模は大きいが、膨大な商品と人員を動かしながら、わずかな利益を積み上げる事業。
スーパーが赤字になる理由
毎日多くのお客様が来店していても、赤字になることはあります。
商品を値上げしにくい
食品は購入頻度が高いため、消費者は価格変化に敏感です。
原材料費や物流費が上がっても、そのまま販売価格へ転嫁できるとは限りません。
廃棄ロスが発生する
肉、魚、野菜、弁当、総菜などには消費期限があります。
売れ残れば、値引きや廃棄が必要です。
売上が立たないだけでなく、仕入れ代と廃棄費用の両方が発生します。
人件費が大きい
レジ、品出し、総菜、鮮魚、精肉、青果、清掃、発注、管理など、多くの人員が必要です。
来店客が少ない時間でも、最低限のスタッフを配置しなければなりません。
電気代を削りにくい
冷蔵庫や冷凍庫は、営業時間外も動かす必要があります。
店舗が大きいほど、空調や照明の費用も増えます。
大型店舗は固定費が重い
売上が上がれば大きな利益を出せる一方、売上が下がったときにも家賃や設備費、人件費は残ります。
大きな店舗ほど、損益分岐点も高くなります。
ドラッグストアが食品を増やす理由
最近のドラッグストアでは、薬や日用品だけでなく、冷凍食品、飲料、菓子、パン、卵、牛乳などを幅広く扱っています。
食品は購入頻度が高いため、お客様に来店してもらうきっかけになります。
食品そのものの利益率が高くなくても、来店したお客様が次の商品も購入すれば、店舗全体の売上につながります。
- 医薬品
- 化粧品
- 洗剤
- 衛生用品
- ベビー用品
- ペット用品
- 健康食品
ドラッグストアにとって食品は、利益を直接大きく稼ぐ商品というよりも、来店頻度を高める「集客商品」としての役割もあると考えられます。
また、同じ地域に複数店舗を配置するドミナント戦略では、配送や広告、知名度、店舗管理を地域単位で効率化できます。
ただし、店舗を増やしすぎれば自社店舗同士でお客様を奪い合うため、商圏人口と競合状況の分析が必要です。
スーパーと商店街では強みが異なる
スーパーと商店街は、同じ小売業でも構造が違います。
スーパーの強み
- 一つの店舗で買い物を完結できる
- 駐車場を確保しやすい
- 大量仕入れによって価格を抑えやすい
- 営業時間が長い
- 品ぞろえが多い
- レジや在庫管理を仕組み化しやすい
商店街の強み
- 専門知識のある店主から購入できる
- 商品の背景や調理方法を聞ける
- 地域の人との関係を作りやすい
- 小回りの利く仕入れやサービスができる
- 店ごとの個性を出しやすい
- 買い物そのものを体験にできる
価格や利便性だけで競争すると、小さな商店は大型スーパーに勝ちにくくなります。
一方で、専門性、接客、地域性、希少性などは、小規模店舗でも強みを作れる分野です。
これは美容室経営にも共通します。
スーパーと低価格カット専門店の共通点
スーパーの売上構造を考えていると、低価格カット専門店との共通点が見えてきます。
どちらも、基本的には次の式で成り立っています。
売上=客数×客単価×営業日数
低価格カット専門店の例
客単価1,400円、1日25人、月25日営業なら、月商は87.5万円です。
1,400円×25人×25日=175万円
客数が1日10人増えると、月商は35万円増えます。
1,400円×10人×25日=35万円
低価格カットでは、1人あたりの単価が低いため、客数と回転率が重要です。
スーパーも同様に、1回の買い物で大きな利益を取るのではなく、大量の来店客と購入点数によって売上を作ります。
スーパーと美容室で異なるもの
大きな違いは、売上を増やす際の制約です。
スーパー
- レジを増やせる
- 売場を広げられる
- セルフレジを導入できる
- 商品を同時に多数販売できる
- 物流と在庫を仕組み化できる
美容室
- 施術者1人が同時に担当できる人数に限界がある
- 技術者の採用と育成に時間がかかる
- 売上が人の技術と労働時間に依存する
- スタッフが退職すると売上も失いやすい
- 店舗を増やすほど管理者が必要になる
スーパーは商品と設備を中心に規模を拡大できます。
美容室は人材が売上の中心になるため、多店舗化の難易度が高くなります。
10店舗に増やせば利益も10倍になるのか
理論上は、1店舗で年間100万円の利益が残るなら、10店舗で年間1,000万円になります。
しかし、現実には単純に10倍にはなりません。
店舗を増やすと、次の費用や問題も増えるからです。
- 出店費用
- 採用費
- 教育費
- 店長や管理者の給与
- 労務管理
- 店舗間の移動
- クレーム対応
- 売上金や在庫の管理
- 退職リスク
- 店舗ごとの売上格差
- 本部機能の整備
特に美容室では、スタッフが独立したり、より条件の良い店へ移ったりする可能性があります。
自分が現場に立つ1店舗経営と、人に任せる多店舗経営では、必要な能力がまったく異なります。
多店舗化を考えるなら、出店前に次の数字を固めなければなりません。
- 1店舗あたりの月商
- 1店舗あたりの営業利益
- 店長不在でも回せる業務手順
- 採用から戦力化までの期間
- 退職者が出ても維持できる人員構成
- 出店資金の回収期間
「現在の店舗が儲かっているから増やす」のではなく、再現可能な仕組みが完成しているから増やすという順番が必要です。
店舗経営では売上より粗利益を見る
売上が大きいことは重要ですが、経営を安定させるには粗利益を見る必要があります。
例えば、月商1,000万円でも粗利益率が20%なら、粗利益は200万円です。
1,000万円×20%=200万円
月商500万円でも粗利益率が50%なら、粗利益は250万円です。
500万円×50%=250万円
売上は後者の方が小さくても、経費を支払うための原資は多くなります。
そのため、業種の異なる会社を売上高だけで比較しても、本当の収益力は分かりません。
最低でも、次の4つを分けて見る必要があります。
- 売上高
- 売上原価
- 粗利益
- 営業利益
小規模店舗がスーパーから学べる5つのこと
1.客数を感覚ではなく数える
「今日は忙しかった」という感覚だけではなく、時間帯別の客数を記録します。
美容室なら、次のように分けると改善に使えます。
- 開店から10時
- 10時から12時
- 12時から15時
- 15時から閉店
スタッフを配置する時間や、休憩を取る時間も決めやすくなります。
2.客単価を分解する
平均客単価だけでなく、メニュー別の利用割合を確認します。
客単価=カット+カラー+シャンプー+追加メニュー
値上げだけでなく、組み合わせによって客単価を上げる方法もあります。
3.売上ではなく粗利益を確認する
売上が増えても、材料費や人件費が増えすぎれば利益は残りません。
施策を実行する際は、「いくら売れるか」ではなく「いくら残るか」まで計算します。
4.繁忙時間へ人員を集中させる
スーパーが時間帯に合わせてレジ担当を増減させるように、美容室も忙しい時間へスタッフを集中させる必要があります。
終日勤務にこだわらず、午前中だけ、夕方だけといった配置も検討できます。
5.多店舗化より先に1店舗の型を完成させる
売上、利益、採用、教育、清掃、接客、会計を標準化します。
経営者が不在でも同じ品質で営業できない状態では、店舗を増やすほど問題も増えます。
よくある質問
スーパーの1日売上はいくらですか?
店舗規模や立地によって大きく異なります。
業界資料に掲載された売場面積1,400平方メートル程度の店舗では、平日1,675人、客単価2,191円という中央値が示されており、単純計算すると平日の1日売上は約367万円です。土日は約460万円になります。
スーパーは利益率の高い事業ですか?
商品カテゴリーによっては20%から40%程度の粗利益率がありますが、そこから人件費、家賃、電気代、物流費、廃棄ロスなどを支払います。
ヤマザワの2026年2月期の売上高営業利益率は約1.1%であり、売上規模の割に最終的な利益率が薄い場合があります。
店の売上を外から推測できますか?
正確な数字は分かりませんが、駐車場の回転数、レジ台数、客数、客単価、営業時間から概算できます。
ただし、観察する時間帯が偏ると大きくずれるため、複数の時間帯で計測する必要があります。
売上が高ければ経営は安定しますか?
売上だけでは判断できません。
粗利益率、固定費、人件費、借入返済、在庫、廃棄ロス、税金まで含めて、最終的に現金が残るかを確認する必要があります。
まとめ|身近な店を数字で見ると経営の構造が見えてくる
スーパーへ買い物に行ったとき、多くの人は商品の価格だけを見ています。
しかし、経営者の視点で眺めると、別のものが見えてきます。
- 1時間に何人来店しているのか
- 1人がいくら使っているのか
- レジは何台動いているのか
- 何人のスタッフが働いているのか
- 商品の粗利益はいくらなのか
- 家賃や人件費を引いた後にいくら残るのか
今回の音声配信では、正確な資料を見ずに「月商はいくらだろう」「客数は何人だろう」と推測しながら話しました。
計算が行ったり来たりした部分もありますが、身近な事業を数字で考えること自体には大きな意味があります。
ただし、実際の経営判断では、売上と粗利益、営業利益を混同してはいけません。
スーパーは億単位の売上を作れる一方で、多くの商品、人員、設備、物流を維持しながら、薄い利益を積み重ねる事業です。
低価格カット専門店も、客単価は違いますが、客数と回転率を積み重ねて売上を作る点では似ています。
身近な店舗を観察し、自分の事業に置き換えて考える。
その繰り返しが、経営の理解と次の改善につながるのではないでしょうか。
今回も最後まで読んでいただき、ありがとうございました。